サッカー観

 なかなかすっきり、とはいかないW杯最終予選。一部メディアでは監督の資質に関する疑義、解任話まで出るようになった。うまくいかないときにそういう話が出るのは当たり前であり、常に疑問をつけるのはメディアの一定の役割だと思うのでそれ自体は構わないし、個人的にはハリル監督のサッカーは特にいいとも悪いとも思わない。
  ただ、最近の議論ではハリル監督に批判的なメディアなり識者の「サッカー観」が少し気になる。端的に言えば先日の豪州戦への評価なのだが「勝てた試合を落とした」「引いて守ってばかりだった」という批判が見受けられる。指摘自体は別に間違いではない。引いて守っていたのは事実だし、勝ちかけていた試合だった。疑問があるのは「引き分けではそんなにダメなの?」「引いて守っちゃダメなの?」という点だ。まず、メディアや識者が試合前のプレビューで「攻撃的に勝てる試合だ」としていたならともかく、「日本の力は落ちている。何としても最低勝ち点1を」という論調が大半だったように思う。アウエー豪州での勝ち点獲得自体久方ぶりだったはず。勝つほうがいいに決まってはいるが、「最低限の結果」というのは、これを下回らなければ一応はオッケーのはずなのに引き分け、という結果への批判はおかしく感じる。
  また「引いて守った」「攻撃的でなかった」という批判にも首をかしげる。それこそメディアや識者がブラジルW杯後に「ポゼッション、攻撃指向にこだわる『自分たちのサッカー』で失敗した」「相手に合わせた堅固な守備からカウンターのサッカーもできないと」と大合唱したばかりではないか。豪州とのかみ合わせもあったが、見ている限り、両ウイングも下がり目で2列のブロックを敷いて守るしたたかなやり方が見事にはまっていたし、そこからの速攻で実際に得点もしている。セットプレーはともかく豪州に崩されたり、放り込まれてのピンチは皆無と言ってよかった。終盤は勝てそうな雰囲気もあっただけに、攻撃的な選手交代も、とも思ったが「リスクを負って勝ち点を失うなら引き分けで良し」とする采配はよく伝わってきた。
 
  「最低限の結果」なのでハリル監督を絶賛する必要はないだろうが、かといって「采配に疑問」とか「解任」という文字が躍るのはなんでかな、と考えていたが、そういう記事を流すメディアや識者は「日本代表は攻撃的でどんな試合展開でも勝利を目指すサッカーをするべき」という前提というかサッカー観が強固にあるんだろうな、と感じるようになった。
  別にこれはこれで悪いことだとは思わない。ただ現実的かというと「?」だし、ブラジルW杯後も「日本はポゼッション、攻撃サッカーでいくべし」と論陣を張るべきだろうし、「ザックジャパンは間違ってなかった」とするべきなのではないか。
  こういった一貫性に欠ける機会主義的な論調はどうなのかな、と思うが、それよりもさらに深刻だな、と感じるのは「『守備的』への批判=常に攻撃的に試合を進めなければ=すべての時間帯で点を取れるように優位に試合を進めるべき」というサッカー観だ。もちろんこういうサッカーができたら理想的なので、そこを目指すのも間違いではないだろうが、日本にワールドクラスの選手が全ポジションに複数そろわないとなかなか現実味はない。相手も、それなりの水準の選手たちが日本に勝つなり点を取られまいと一生懸命やってるわけで、すべての時間帯でうまくいく、なんてことがあるわけもない。うまくいかないときは我慢してしのぐしかないし、リードしてるなら相手をいなしてボールをだらだら回したり、大きく蹴っていなすのも有効だ。先制されたら「早く追いつきたい」のは確かだが、前がかりになって追加点を取られる恐れだってある。なら時間帯によっては我慢して終盤にラッシュをかける、という手だってなくはない。豪州戦だって勝利を希求して攻撃的な選手を入れた結果、勝ち点を失ってしまった可能性だってなくはないのだ。
  「常に攻撃的であれ」というサッカーは魅力的だし、できるならそうしてほしいとも思う。ただ、そればかり追求していると、代表ができる「サッカーの幅」が狭くなってしまう。「常に攻撃的」なサッカーがうまくいかなかったときの引き出しがなくなってしまうと思うのだ。それが日本サッカーにとってよいのかどうか。「自分たちの好きなサッカー観」を押し付けることがいい結果を招くのかどうか、一度考えてほしいところだ。
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蹴球四十雀

Author:蹴球四十雀
滋賀のサッカーJFLチーム「MIOびわこ滋賀」を心の底から応援しつつ、たまにフットサルで息を切らす。一方、書斎での濫読(純文ラノベ歴史ノンフィクション)や琵琶湖周辺の野山歩きもこたえられません!

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