引き分け戦略

 男女とも決勝T進出で狙い通りの組み合わせを引き当てたGL3戦目となり、日本サッカーの成長を感じた。これがW杯ならもう立派な強豪国だな。ただ男子ブラジル、女子米国ほど図抜けた力強さはまだ男女ともになさそうなので、ここからは総力戦。狙い通りの2位抜けやスタメン休養明けであっさり敗れるチームもあるので、よっぽど大差が付いたケースを除き出し惜しみなく戦って、ピッチ上で許される範囲でどんな形でも勝利をもぎ取って欲しい。
 
 女子の南ア戦の直後にバドミントンの中韓インドネシアに失格があったことと、佐々木監督の「引き分け指示」発言もあり、男女サッカーとも「引き分け狙いの是非」を問う声が一部で上がっているようだ。五輪大会らしい議論ではある。ただバドミントンはいざしらず、サッカーに関しては相手と談合しているわけでなく、わざとオウンゴールをしたり、わざと点を取らせている(意図的な敗退行為)ではないので、何の問題もない。
首位抜けをしたいから確実に勝ち点1を確保に行った男子はもちろん、女子も「わざと2位に落ちた」のではなく、「3位抜けのリスクを避けるために確実に勝ち点1の積み上げを狙った」とも言える。佐々木監督が割と正直にしゃべった(事前に騒いだマスコミのせいで選手を守るために三味線を弾けなかった?)ので、変な方向に波及してしまった。佐々木監督はしれっと「私の采配ミスで結果引き分けでした」と言えば良かったとは思うが、スポーツに「負けないための戦い」があってはならず「すべてが(その試合に)勝つための戦い」でないといけないのだろうか。
完全トーナメントならばともかく、GL制を導入している以上3戦目の「計算」は出てくるし、自分などはそのあたりも含めて「楽しい」と感じる。例えばJFLでもMIOはリードされたら律儀に取り返しに行く(その分痛い目にあうことも多いが、自分はMIOがそういう選択をしているのだったらそれでいい、と思っている)が、大量失点より最少失点差負けならいい、という局面もリーグ終盤にはないとは言えないし、その場合に「勝ちに行かない戦い」をすることは理解できる。まして引き分けでもいい、というゲームはいくらでもある。 

 W杯ならだれもなにも言わない話だろうが、五輪大会だからこその議論。スポーツマンシップ(定義は何なのかと思うが)を重視するのは分かるが、陸上や水泳、体操のように記録や採点で勝敗をつける競技ならともかく、対戦競技ではどうしたってこういう問題は出てくる。こと精神性を重んじる柔道ですらGL制にしたら同じようなことにならないとは限らない。バドミントンはサッカーと違ってゆっくりボールを回しながら、ともに顔色をうかがって「引き分けでよさそう」という暗黙の了解が成立しにくそうだし、そもそも引き分けがなさそう(卓球、テニス、バレーもないか)なので、ああいう形にならざるを得なかったのでは、と素人ながらに思わないでもない。
すべての試合で五輪精神を発揮させたい(全ての試合で全力を尽くさせ勝利に向かわせたい)のであれば、選手のモラルに寄りかかるのではなく、GL高順位抜けの特典をきっちり(競技ごとの世界大会などよりも手厚く)つけることだろう。完全トーナメントにしても良いが、それで各国の実力順がうまく反映されるのかは疑問だ。

映画「炎のランナー」好きの身には、見返りのためだけでなくスポーツをする「五輪の精神」も大事だと思う。一方で10年W杯のウルグアイ・スアレス選手の意図的なハンドや、11年女子W杯決勝の岩清水選手のファウルは素晴らしいプレーだと感じる。あの時のウルグアイや日本がどれだけ勝利を渇望していたか、第三国の観戦者にわかるだろうか。「観客のため、少年少女のため、高潔な精神のため」にプレーするのもよかろう。だがそれだけでないプレーがあるのもスポーツの魅力だ。

 最後に、90年W杯あたりからサッカーを見続けている自分にとって、ベテランサッカージャーナリスト・大住良之氏の「なでしこのフェアプレーはどこに」という趣旨の記事は意外というかショックだったし、その分、同じく大御所の藤健生氏の記事「佐々木監督のタヌキぶりを評価」には救われた。
大住氏は、女子不遇の時代からずっと女子サッカーに言及していて、男子と違うフェアプレーのよさを「女子の売り」として紹介し続けてきただけに、心情として分からなくもない。ただサッカーを知っている読者ならともかく、五輪大会でサッカーを知らない読者(特によく分かっていない高齢者層)に「なでしこは卑怯なことをしたのか」との誤解を与えかねないような表現だったのではと感じた。
ちなみに女子代表は基本フェアな守備をする。米国やカナダ、スウエーデンは守備技術の未熟もあるのか「そんな危ないタックルしてくるか?」という場面が何度かあった。実際に大会前の米国戦で宇津木選手が壊された。どうせならその部分も紹介して欲しかったし、ずっと女子サッカーを見守ってきた大住氏だからこそできるはずだ。
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蹴球四十雀

Author:蹴球四十雀
滋賀のサッカーJFLチーム「MIOびわこ滋賀」を心の底から応援しつつ、たまにフットサルで息を切らす。一方、書斎での濫読(純文ラノベ歴史ノンフィクション)や琵琶湖周辺の野山歩きもこたえられません!

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