「終わらざる夏」

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 太平洋戦争末期、ひそかに終戦工作が進む中、翻訳者片岡、医師菊池、かつての戦場の英雄富永は応召を受けてソ連領カムチャッカ半島に隣接する占守島へと送られる。そこには満州から転戦してきた精強な一個師団がいた。8月15日を過ぎた彼らに、運命の時が訪れる。

 浅田次郎渾身の終戦もの、といった触れ込みで昨夏に大々的に話題になったが、やっと手にした。さまざまな語り手の人生、朴訥な東北弁、悲劇への歩みはいずれも作者得意の手法で特に上巻は読ませどころ泣かせどころが随所に表れてさすがというほかない。ただ、子供たちのターンから始まるソ連将校の夢物語や不可思議譚はかえって興ざめではないか。 またこれも終盤になって現れる各人の反戦思想は、登場人物の歩んできた人生由来というよりも、戦後の観点がやや入り込み過ぎているように感じ、ここもどうかなと思う点だった。「シェラザード」あたりもそんな感じだったが。

 ただ、招集令状を受けた各人、その家族や行き買う人々には当たり前だがそれぞれに大切な人、重要な人生があり、戦争による不条理な人生破壊の悲劇と憤りはよく伝わってくる。
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蹴球四十雀

Author:蹴球四十雀
滋賀のサッカーJFLチーム「MIOびわこ滋賀」を心の底から応援しつつ、たまにフットサルで息を切らす。一方、書斎での濫読(純文ラノベ歴史ノンフィクション)や琵琶湖周辺の野山歩きもこたえられません!

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