下鴨納涼古本まつり

 下鴨神社で毎年8月中旬に開かれる「納涼古本まつり」に初めて行ったのは、お金がなかった学生時代。社会人になって足が遠のいたが、通いを再開してもう10年近くになる。大規模な古本市はほかにもあるけれど、お盆あたりの、だらん、とした暑さの中、下鴨神社の境内にテントが立つのがいかにもお祭りで楽しい。地味な本好きの世界にも、たまにはこれくらいの華やぎがあってもいいか、と思う。
 
 本漁り中にいやでも目に入るのだが、楽しみ方は人ぞれぞれ。狙いの本や関心分野を中心にじっくり探す人、ふらりと立ち止まって江戸末期あたりの和書を手にとって「面白そう」とはしゃぐ人、そういった来場者も含めて会場全体の空気を写真に撮ってSNSに投稿する人など、多様で「こういう楽しみ方もいいな」といつも刺激される。
 来場者もいかにも本好きな高齢男性や女性だけではない。おしゃれな若い男女が難解な哲学書に手を伸ばしていたり、外国の方が日本人でもなかなか読まないだろう仏教書を品定めしていたり、観光客が浮き立った様子で写真を撮っていたり、と見ているだけで面白い。立地もあるのか、高名な大学の先生や文化人の姿をたまに見かけると、自分も少し賢くなったように錯覚して、やや気分がよい。

 自分はある程度目当ての本(絶版のもの中心)と予算の上限を決めて朝から収納用のリュックで出かける。涼しい下鴨神社とはいえ、人出で暑いので帽子にサンダル、リュックの中には水筒を備えている。
 テント群の端からしらみつぶしに棚を見て、目当ての本、気になる本があれば買っていくスタイルだ。立ちっぱなしなのでお茶休憩に加え、境内の川で手足を冷やす、下鴨神社ならではのクールダウンがありがたい。狙った本や「おっ」という本と出会うと実に嬉しいもの。反対になかなか目当ての本に出会えず、かつ気になるほかの本が出てくると、時間とともに焦りも出てくる。
 しかしそこは焦っても仕方がない。昼食(境内のうどんか出町まで足を延ばすか)を挟んで渉猟を再開、残りのテントを潰していくと、何だかんだと見つかるものだ。予算の8、9割で押さえるべき本を押さえ、あとは気になる本、関心のあまりない分野を冷やかすのも大規模な古本市のよさ。戦前の雑誌や江戸末期の和書を開くと、気分も出てくる。
 いつしか日が傾くころになり、予算枠いっぱいまで買うとリュックはずっしりと重く、肩も足もパンパンに痛い。それでも満足感と、後ろ髪引かれる思いを胸に境内を去る心地はなんともいえない。
 帰宅すれば買った本を並べて手に取り、本棚に移す楽しい作業も待っている。そしてその時点から来年は何買おうか、と思い始める、実に充実した一日となるのだ。
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蹴球四十雀

Author:蹴球四十雀
滋賀のサッカーJFLチーム「MIOびわこ滋賀」を心の底から応援しつつ、たまにフットサルで息を切らす。一方、書斎での濫読(純文ラノベ歴史ノンフィクション)や琵琶湖周辺の野山歩きもこたえられません!

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